蟬川 泰果(せみかわ たいが)選手。2001年1月11日生まれ、兵庫県加東市出身のプロゴルファーです。
アマチュアとして史上初めて国内ツアー2勝を達成し、プロ転向後も次々と歴史を書き換えてきた「和製タイガー」。
22歳148日で池田勇太の記録を更新する史上最年少の日本タイトル3冠を達成しました。
原点と学生時代
蟬川が最初にゴルフクラブを手にしたのは1歳のころ。
父がプレゼントしたプラスチック製のクラブがすべての始まりで、2歳で練習場デビュー、3歳でショートコースデビューを果たしました。
幼少期の遊び場はデパートのゴルフ用品売り場の試打室だったというエピソードが、いかに早い段階からゴルフが生活の中心にあったかを物語っています。
名前の「泰果」は、タイガー・ウッズに因んで父が命名し、祖父が漢字を考えたといいます。
その名を体現するように、小学校3年のときには競技会に初出場。
中学校3年のときには男子プロゴルフツアー大会「全英への道 ミズノオープン」にも出場しています。
兵庫県の興國高等学校進学後は2017年関西ジュニアゴルフ選手権競技(男子15〜17歳の部)および第73回国民体育大会(2018年・福井県)ゴルフ競技男子少年の部にて優勝。
高校在学中にすでに全国レベルの大会でタイトルを手にしていました。
東北福祉大学への進学後も成長は止まりませんでした。
大学4年時の2022年には歴史的な偉業を成し遂げます。
夏には「世界アマ」で個人2位に入り、帰国後9月の「パナソニックオープン」3日目にアマ新記録の61で首位に並ぶと、最終日は岩﨑亜久竜に競り勝って史上6人目のアマ優勝を果たしました。
さらに、2022年10月に行われた「日本オープン」では初日から首位を独走し、最終日も逃げ切って完全優勝。
第1回大会(1927年)の赤星六郎以来95年ぶりとなるアマチュア優勝を果たし、史上初となる「アマチュアによる日本のプロツアー2勝」の快挙を達成しました。
同月5日時点での世界アマチュアランキングでも1位に浮上。同年10月31日にプロ転向を表明しました。
プロ入り後の歩みと転機
2023年4月の「関西オープンゴルフ選手権競技」でプロ転向後初優勝。
プロ初年度、しかもシーズン序盤からタイトルをものにする速さでした。
同年はさらに「日本シリーズ」など2勝で賞金ランク2位に。
イーグル数は歴代最多となる23個をマークしました。
とりわけ最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では、1981年の羽川豊が23歳363日で記録した大会最年少優勝を22歳326日で更新し、アマ・プロ両方でのメジャー制覇は史上初の快挙となりました。
しかし、順調だけではありませんでした。
2024年は「日本プロ」を1打差で逃すなど勝利に恵まれないシーズンとなりました。
翌2025年、PGAツアー昇格を目指して意気込んだ米下部コーンフェリーツアーでは、2月の第4戦を棄権した1カ月後に、左背中側の肋骨3本の疲労骨折が判明しました。
「絶望だった」という本人の言葉が示す通り、目標としていたPGAツアー昇格の夢が早々に断たれた苦しい時期。
それでも妻の久保葵さんが「絶対に大丈夫」と励まし続け、6カ所目の大学病院でようやく正確な診断にたどりつきました。
静養とリハビリを経て、5月の「中日クラウンズ」でツアー復帰。
そして復帰わずか4試合目、2025年6月の「BMW日本ゴルフツアー選手権」へ。
1打差3位から出た最終組でのプレーは、メジャーの優勝争いにふさわしい熱戦でした。
2打差に離された前半2番(パー5)では、約30ヤードの3打目を直接カップに沈めるチップインイーグルで流れを引き寄せると、最終18番でバーディを決めてプレーオフへ。
1ホール目でもバーディを奪い、堀川未来夢を下して2年ぶりの優勝を飾りました。
優勝後には「ウィニングパットの記憶がない」と述べるほどの集中力。まさに極限の状態から引き出した勝利でした。
プレースタイルの特徴と主な実績
蟬川の最大の武器は、攻めっ気と冷静さを両立させるプレーです。
プロ1年目にイーグル数歴代最多の23個をマークしたことが示す通り、パー5での積極的な2オン狙いや勝負所での大胆なショット選択は、スコアを一気に動かす力を持っています。
一方で勝負所での我慢も持ち味で、難しい場面でスコアを崩さない安定感もあります。
2025年シーズンの平均ストロークは1位という数字がその実力を裏付けています。
キャディの岡本史郎氏は「思い切りがいい。ちょっとやそっとのことじゃ崩れない」と蟬川のメンタルを評価しています。
アマチュア時代から大舞台で優勝を重ねてきた経験値が、プレッシャーのかかる局面での強さに直結しています。
主な実績をまとめると、
- ツアー通算5勝(2025年6月時点)
- 2022年「パナソニックオープン」アマチュア優勝(史上6人目)
- 2022年「日本オープン」アマチュア優勝(95年ぶり)
- 史上初のアマチュアによるツアー2勝
- 元世界アマチュアゴルフランキング1位
- 史上最年少日本タイトル3冠(24歳148日)
- 2023年「ゴルフ日本シリーズ」大会最年少優勝(22歳326日)
記録のたびにその名が歴史に刻まれています。
まとめ
1歳でゴルフを始め、アマチュアとして日本の歴史を2度書き換え、プロ転向からわずか数年で日本タイトル3冠を達成。
蟬川泰果のキャリアは、一つひとつの節目に「史上初」「史上最年少」という言葉が並びます。
2025年の肋骨骨折という試練でさえ、復帰4試合目でのメジャー制覇という形で乗り越えてみせました。
「来年は日本プロを獲りたい」という言葉には、片山晋呉のみが達成している現行の日本タイトル4冠への強い意欲が込められています。
キャリアの蓄積はむしろここからが本番で、国内外を問わず、この男が作る記録の続きを見届けたいファンは多いはずです。


















